20歳のぺこりーのへ
20歳のお前は成人式に出ることもなく、京都の学校でアルバイトばかりの生活だったな。
おふくろは離婚したし、おやじは私を引き取ったものの翌年には死んでしまった。
育ててくれたじいちゃんもばあちゃんももう死んだ。
兄弟もなくひとりで見知らぬ京都の街で必死で生きていたよな。
不安で不安でどうやってひとりで生きて行けばいいのかわからなかったあの頃。
でも大丈夫だよ。
お前は意外に長生きしているから安心しな。
まだガラスに絵を描くバイトをやっているのか?
あのバイトは面白かったけどもうやめた方がいい。
実はもうお前は絵など描いてないのだよ。
なんで美大なんか行ったんだろうな。
学校を卒業したらお前はマーケッターになるのに。
だから絵はやめてマーケティングの本でも読んだ方がいい。
本と言えば、エロ本を捨てるときは曜日を間違えるなよ。
こっそり捨てたつもりでも、下宿のおばちゃんが『資源ゴミの曜日じゃないわよ』と部屋まで持ってくるから。
今でもなんで俺が捨てたとバレたのかはわからないが、とにかく曜日を確認して捨てろ。
それとバイト先の食堂のまかないのとんかつにレモンは絞るなよ。
あのおやじ、客が残したレモンはそのまま使いまわしてやがったから。
あ、あとパセリもな。
そうだ!
金沢出身の可愛い彼女ができただろ?
その彼女にふとんのシーツになんで染みがついてるのって聞かれて、お前はとっさに『どん兵衛の汁をこぼした』と嘘を言っただろ。
やめとけ。
どうせあの彼女にはビンタされて別れることになる。
あの年上のOLも、背が高い看護師も、みんなお前は別れちゃうよ。
みんなにビンタされて。。。
でもな。
大丈夫。
みんなにビンタされて愛想尽かされたおかげで、お前はあるクリスマスパーティで、ひとつ年下の超美人の女の子と出会うから。
そしてお前はその子と結婚するんだ。
そうだよ、その子はお前の嫁さんになるんだ。
その子とはとても気が合う。
たまには喧嘩もするけど、すぐに仲直りしてまた友達のように仲良くなるのさ。
お前は急に仕事を頑張りはじめ、どんどん給料も上がって行く。
そして子供が生まれてお前はパパになるんだよ。
可愛い可愛い女の子。
名前はお前がつけた。
幸せな日々が続いたよ。
小さい頃、どんどん家族がいなくなったけど今度は家族が増えるんだ。
可愛い娘も大きくなり大学を卒業して働き出す。
お前は一人前の男になったんだ。
すべては愛する嫁さんのおかげで、毎日毎日本当に楽しかった。
嫁さんが飼うと言い出したワンコたちが家族に加わり、さらに賑やかな家になっていった。
そんな矢先に最愛の嫁さんが倒れるんだ。
急性心筋症という病気で。。。
原因がわからない難病だ。
どうやら心臓が弱っていたらしい。
ちょうどこんな春の日だったよ。
会社で仕事してたら携帯が鳴ったんだ。
それから3ヶ月。
頑張って頑張って病気と戦ったけど、最後は俺が先生にもういいですと伝えたんだ。
もう身体中の管を嫁さんから外してあげたかった。
2人で長い時間暮らしたけど、残念ながら最後は言葉を交わせなかったんだ。
20歳のお前に実は伝えたいことがあるんだよ。
結婚した嫁さんは、30歳になると友達とある占い師のところへ行くと言い出すはず。
その占い師は、嫁さんが60歳を前にして難病で死ぬことを予言したんだ。
家に帰ってきた嫁から占い師の話を聞いたんだが、その時はずいぶん先の話だったから気にも止めなかった。
しかし、その時のことをよくよく思い出してみると、占い師の話にはまだ続きがあった。
嫁さんが病気にならない方法を占い師は教えてくれてたんだ。
年月が経ってその話はすっかり忘れていたけど、今頃になってそんなことがあったと思い出したんだ。
20歳のお前に頼みとは、その占い師が言った嫁さんが助かる方法を絶対に忘れてはならないということ。
そしてその方法を必ず実践すること。
この2つのことを絶対に忘れずにやってほしいんだよ。
あの占い師の言ったことは当たった。
だから病気にかからない方法もきっと当たるはず。
今のお前には意味がわからないだろうが、この歳になった俺が言うから間違いない。
そうすればお前の幸せな家族との生活は、もっともっと長く長く続くよ。
そして十分長生きしたら、今度はお前が先に死んでくれ。
老後のおひとりさまごはん
昨日の朝食は野菜スープライス。
リゾットのようなものだが、お米の感触が残っててこっちの方がうまい!
20歳の俺にも食べさせてあげたかったな。
ランチは竹輪天そば。
80円の竹輪天をトッピングしただけのおそばだが、これから冷たいそばが美味しくなるな。
昨日からざるが大活躍だ。
休肝日明けはいつものビアバーへ。
バーの元店長の奥さんがきていたが、なんと2人目がお腹の中にいるとのこと。
私がこのバーに通い出した頃は、まだ2人は他人だったのに・・・
このバーの椅子に私はどれだけの長い時間座っているんだろう。
このバーはもう私の人生の一部だ。
酔って帰ってから作った晩ごはん。
また妙な物が登場している。
そうだ、缶詰をゆっくりゆっくり温める缶詰ウォーマーだ。
固形燃料の火が直接当たらない仕組みになっているから、缶詰の内側にコーティングされている腐食防止剤が熱で溶け出さないようになっている。
食事が楽しくなりそうなものはついつい買ってしまう。
昨日の残った唐揚げをカリカリに温めて、オーロラソースをかけてトルティーヤで包んで食べる。
ちょっとしたおうちキャンプ気分である。
ハラペーニョたっぷりのチリコンカンも作ったが、激辛で死ぬかと思った。
20歳の俺!
お前は64歳になったらこんなもん食ってるぞ。
お前が約束を守ってくれないと、お前はずっとひとりで寂しく飯を食うことになる。
もう少し嫁が作った手料理を食べたいよ。
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