空想飛行
嫁が死んですぐの頃・・・
嫁との思い出の場所をもう一度辿ってみようと思っていた。
6年前だからまだ体も動いていたし。
いいのか悪いのか、引っ越しばかりの結婚生活だったからいろんなところに思い出がある。
嫁を失ったばかりの悲しみのどん底で、なんとかして嫁と暮らした30年の記憶をもう一度辿りたい。
まさにただのセンチメンタルジャーニーだ。
しかし、嫁が残したゆいまるくんを何日も預ける場所もない。
あいつだってきっと悲しんでいる。
なのに私だけがそんな長い旅に出て感傷に浸るのは彼に申し訳ない。
結局悩んだ挙句、ゆいまるくんの大好きなトリマーさんがいるサロンに1週間だけ預けて、私は駆け足で九州の旅に出かけた。
ただ嫁との思い出の地を辿るという旅ではなかった。
もう最後かもしれない老いた母に会い、古い友人たちと酒を飲み、ただそれだけで旅は終わってしまった。
後から考えればただ九州に飲みに行っただけの旅だった。
今でももう一度思い出の場所に行ってみたいという思いは残っている。
嫁が死んで6年も経つからただの感傷旅行ではない。
自分の人生をも辿ってみたいと思っているのだ。
こんな事を言い出すと、なんだかもう死期が迫った老いぼれのようだと言われそうだ。
しかしあながちそうじゃないとも言えない。
残された人生で振り返ってみたいことはたくさんある。
懐かしさもあり自分の人生に点数をつけたい気分でもある。
しかしきっともうそんな旅はできないとも思っている。
おそらく空想の中でしか辿れない旅だろう。
空想の中だったら空でも飛べる。
じゃあ嫁と一緒に空を飛んでみるか!
久しぶりの九州の空だ。
気持ちがいいぞ。
ここが嫁と出会った街、熊本市。
夜の熊本の街をどれだけ飲み歩いたことか・・・
お気に入りの居酒屋も寿司屋もまだやってるかな?
それから福岡に引っ越して住んだ家賃の安い市営団地。
この団地に夜やってくるラーメンの屋台!
よくラーメン食べたね。
火事にあった六本松のマンションもまだある。
目の前が娘が通った保育園!
当時の元祖長浜屋は無くなったけど長浜ラーメンもよく食べたよね。
思い出すだけで痛風の発作がでそうだ。
それから京都の庭付きマンションもよかった。
タイに行った時に買った竹でできたパラソルを庭に置いたね。
よくその庭で家族でバーベキューもやったし・・・
給料日に行ってたあの焼き鳥屋もまだあるよ。
君が好きだった鶏皮ポン酢!
美味しかった。
そして東京だ。
最初に住んだのが板橋のマンションの10階。
窓から目の前に見える荒川の花火は最高だった。
東京が珍しくて毎週浅草で人力車に乗ったね。
空を飛べたらあっという間に思い出の場所に行けちゃうな。
そして最後は君がいなくなった練馬のマンション・・・
空想飛行はここで終わり。
この場所で君は本当に空を飛んで天国に行ってしまったんだな。
空想にしておいてくれたらよかったのに。
老後のおひとりさまごはん
昨日は朝から冷やしたぬき蕎麦。
いろいろ消費期限が迫って困った。
これも生蕎麦だからね。
刻み海苔をかけるの忘れた!
でも冷たいお蕎麦はいつでも食べれるな。
ランチも麺。
トマトポタージュラーメン。
トマトポタージュスープも残っていたのでラーメンにした。
うんま!
そういやラーメンって久しぶりじゃね?
晩ごはんは前日から漬け込んでおいたタンドリーチキンとイカとパクチーのエスニック炒め。
タンドリーチキンは自信がある。
隣のインド料理屋のタンドリーチキンよりも確実にうまい。
体もだんだん動かなくなってくると、そうそういろんなところに出かけるわけにもいかなくなる。
60歳になったらオンボロ車で日本を1周してみたいと思っていた。
しかし現実は何を優先にしているかというとゆいまるくんのことだけだ。
ゆいまるくんも12歳という老犬になって、残りの人生をただただ健やかに過ごしてほしい。
彼を最優先に考えるとおいそれと出かけるわけにも行かなくなる。
だから今は空想で空を飛ぶしかない。
※昨日もコメントありがとうございます!
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10歳の茶トラネコと暮らしてます。定年退職したのに年金がでない1960年生まれです。1年ほど前から拝見させてもらってます。とくに時折の時事ネタに大笑いしてます。