先に死んだのが嫁でよかった
ようやく私に自由な時間がきた!
30年以上どこに行くのもいつも嫁と一緒。
出かける前の化粧や洋服選びに時間がかかるし、買い物の時間は長いし、荷物は持たされるしで、本当に一緒に出かけるのが億劫だった。
これからは一人でどこへでも行けるのだ。
まず何をしたいか?
そうだ、嫁が溜め込んだ服や食器を捨てよう!
まとめてゴミ袋に入れて業者にでも引き取ってもらえばいいか。
気に入らなかったアジアンっぽい藤のベッドも、食器棚も本棚もぜんぶ捨てる!
50枚近くある犬の服もこんなにはいらない。
元々うちの犬は服を着るのは嫌いなのだ。
これまで嫁がうるさいから行けなかった友達との飲み会も、毎晩でも付き合うよと友人たちにLINEしとこう!
そうそう。
歌舞伎町のキャバクラのあみちゃんにも、もう堂々とLINEできるのだ。
LINEの通知音も消さなくていいし、男名前で登録しておく必要もなし!
ハァ〜、気が楽だわ〜。
家でパーティを開いてもいいな。
友人も知り合いのお姉ちゃんたちも呼んで、どんちゃん騒ぎをしよう!
散らかしても嫁に怒られることはもうないのだ。
色っぽい女子に『独身ですか?』と聞かれたら
『もちろん独身ですよ』
とウィンク!
これからたっぷりと恋をして、いつか金正恩のように喜び組みを侍らせよう!
ハーレムだ!!
う〜む。
ちょっと体力つけておかないと、そんなに相手できないぞ。
ジムでも行くか!
また体を絞って筋肉をつけて、ジムの若いヨガの先生と仲良くなるのもいい。
二人でセブ島に行ってビーチヨガを楽しむ!
夕日が海に沈むころになると、ビーチのテラス席でカラフルなカクテルにストローを2本差して、二人で見つめあってお酒を飲むのだ。
『私ちょっと酔ったみたい・・・』
と彼女。
私は鍛えあげた腕で彼女をなんなくお姫様抱っこ。
そのままホテルの部屋へと連れて帰る。
天国とはこの世にあったのか!!
たしかに嫁は死んだ
私よりも先に嫁は死んでしまった。
私が先に逝くはずだったのに現実は逆だった。
そして嫁が先に死んだからと言って、冒頭に書いたようにはならなかった。
なぜならなかったのだ?
自由を手に入れ一人暮らしを満喫し、新しい彼女でも作って、優雅に海外にでも遊びに行けばいい。
なぜそうしない。
現実は、未だ喪失感に苛まれ、ただ無為に4年の時を過ごしただけ。
LINEに友人からメールが来ても既読スルー。
キャバクラのお姉ちゃんはブロックした。
50肩でお姫様抱っこなんか到底無理!
一人では焼肉屋にすらはいれない。
パーティどころか、今日もせっせと自炊して一人で侘しく金麦を飲むだけ。
それが現実だ。
情けないのは男
婦人公論という雑誌に読者体験手記というコーナーがあるらしい。
そのコーナーで76歳の女性の手記が公開されていた。
タイトルは
その手記がたいへん面白かった。
夫が先に死んだ場合と妻が先に死んだ場合とでは、なんかずいぶん違うような気がする。
それで冒頭のようなことを書いてみたのだ。
妻は夫の死後、自分の人生を楽しむべく生き生きと暮らして行くけど、妻に先立たれた夫はきっとそうはいかない方が多いのではないだろうか。
そのいいサンプルが私だ。
つくづく男はダメだな生き物だとあらためて思う。
長年連れ添った夫婦が、相手の死を待ちながら生きる人生とはどんなものだろう。
私には想像がつかない。
それほど嫌なら別れるべきだ。
自分の人生の使い方を間違っている。
ゴミを捨てる人とゴミを拾う人。
他人を助ける人と他人を利用する人。
お金を寄付をする人とお金を搾取する人。
日常の小さな行動がその人の人格を作ると誰かが言っていた。
夫婦生活の積み重ねも同じようなことだと思う。
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