胡散臭い環境イベント
私が東京に来た頃勤務していた会社は、環境NPOから出発して上場まで成し遂げた日本で唯一の会社であった。
会社の事業自体が環境活動になっていて、まさに今のSDGsの先駆けである。
持続可能な社会の実現が社是になっていた。
社員は全員エコ意識が高い。
いや、どちらかというと社員全員が環境活動家かと思うほど、めんどくさい連中ばかりだった。
私はその会社でCSRやコーズマーケティング、カーボンマネージメントなどを担当する部署の責任者をしていた。
環境大賞を何度も受賞し、経済産業省が主催する『持続可能な社会の実現』がテーマの講演会のスピーカーとして何度も招待されたことがある。
自慢か!
いやいや自慢ではないが、こんな私も現役のときはサスティナブルな社会を実現するために微力ながら頑張っていたのだ。
カーボンオフセットのクレジットを海外のプログラムから購入して、そして国の排出ガス規制の目標達成に寄与するために私が償却の手続きをしていた。
当時はエコが仕事であり持続可能な社会の実現がミッションであった。
他にもさまざまな環境系のイベントを企画したり、また参加することが日常という日々。
毎年4月に開催される地球規模の環境イベント『アースデイ』や、100万人のキャンドルナイト、打ち水大作戦などなど・・・
しかしどのイベントも、回を重ねるごとに当初の目的とは少しづつかけ離れていった。
アースデイもそうだ。
最近は、広告代理店のためのただの広告枠にしか見えない。
イベントのときだけ、どこから現れたのかボヘミアンな格好をした若者が会場に溢れる。
日頃はスタバのコーヒーを飲んでるくせに、この日だけはオーガニックコーヒーを飲みエコを訴える。
ブースには電力会社なども参加して、広報担当が社内の環境貢献活動などをアピールする。
環境を考えるなら、一番先に電力会社が火力発電も原子力発電もやめろと言いたい。
原子力発電は炭酸ガスの排出量は少ないがセシウムが地域の環境を破壊する。
エコ活動は、活動自体が常にトレードオフだ。
100万人のキャンドルを作るために、どれだけのエネルギーが必要なのか。
地球の温度を2度下げることを目標にしている打ち水大作戦も2度下がるのはほんの一瞬。
イベントが終わると、ただ無駄に水を撒いただけという虚しさが残る。
エネルギーを使って大規模なイベントをやるよりも、何もやらない方が環境にいいのは誰でもわかっている。
もはや環境イベントは経済活動なのだ。
あなたのそれはエコじゃない
ある日、自宅の洗濯機の風呂水ポンプから洗濯槽へ、お風呂の残り湯が汲み出されているのを見ていた。
ふとその時にある疑問が頭に浮かんだ。
今、電気を使って風呂の残り湯を洗濯槽へ汲み出している。
これは果たしてエコなのか!?
水は常に地球内でリサイクルされているものだ。
途中、人による浄化作業が加わるが、水の循環は自然が作り出した壮大なリサイクル装置である。
これを石炭を燃やして発電させた電気を使って汲み出すことがエコであるわけがない。
一見風呂水の再利用としてエコな行動のように見えるが、よくよく考えてみると水道代の節約という利点はあるものの環境には決して寄与してないのだ。
その水道代の節約も電気代とのトレードオフなので、どちらが得かは結局わからない。
ちっちぇえ話だなと笑われるかもしれないが、個人ができるエコ活動とはどれも小さなことなのだ。
持続可能な社会を目指すには、その小さな活動の積み重ねでしか達成できない。
実はみなさんの身の回りにも、風呂水ポンプのような話がたくさんあるからよく考えてみてほしい。
たとえばペットボトルのリサイクルだ。
みなさんはペットボトルをリサイクルすることが、地球環境にたいへんいいと思っているはずだ。
しかしペットボトルをリサイクルするにはたいへんなエネルギーを必要とする。
新しいペットボトルを作るのに必要な石油は約40g。
しかしペットボトルのリサイクルに必要な石油はなんと150gなのだ。
他にもリサイクルされる資材はたくさんあるが、どれもリサイクルには大きなエネルギーを必要とするものが多い。
できればペットボトルはリサイクルではなくリユースする方が格段にエコである。
すでに日本でも取り組みが始まっているが、リサイクルせずに洗ってそのまま別の商品に再利用すると、リサイクルで必要とするエネルギーは消費しない。
一度私はアパレルの大手ユニクロのリサイクルの取り組みについて、慶應義塾大学まで講演を聞きに行ったことがある。
しかしユニクロの広報担当が説明するリサイクルとはまったく間違いだった。
ユニクロのような会社でもよくわかってないのかと思って愕然としたが、大手企業でもわからないのだから一般の人がわからなくても当然だなと思った。
ユニクロが行っているリサイクルボックスとは実はリユースボックスのことで、現在はそのようにネーミングも改められている。
消費者が着なくなった服をリサイクルボックスに入れると、それをまとめて難民キャンプなどに送るというただそれだけの活動だ。
難民キャンプなどにとってはたいへんありがたい話なのだろうが、ユニクロほどの企業であれば集めた古着を本当にリサイクルして、さらに再販売するというシステムを作ってみてはどうかと思う。
もちろんカーボンオフセットが前提だ。
エコという付加価値をつけることができれば、ユニクロなら売れると思うがいかがだろうか。
私がユニクロのサスティナビリティ担当だったらぜひやってみたいと思う。
あとよく勘違いされるのが、化粧品や洗剤などでよく見かける『レフィル』という詰め替え用商品。
ボトルが再利用されることになるのでエコな感じがするが、実はレフィルを作る工場の生産ラインは新たに作らなければならない。
パッケージにしてもそうだ。
そこには大きなエネルギーを必要とするしコストもかかる。
そのコストを吸収できないので、必ずレフィル商品は本体よりも容量が少ない。
経済的には割安ではないのに割安と思って買っている人がほとんどだたと思う。
もっともエコな活動ではと思っている人が多いのが農業である。
しかし農業は、実は環境破壊のうえに成り立っている。
元々、自然な土地や山を切り開き土地を開墾しているわけで、そこには大量の植物や木々が存在していたはず。
そして化学肥料を撒き除草剤が散布され人類の食糧が生産される。
現在はオーガニックも浸透してきたが、実はヨーロッパの有機JASでは農薬の使用は認められている。
自然な植物や土壌のサイクルを人為的に加工することは環境破壊である。
ほら、だんだん何がエコで何が環境負荷が高いのかわからなくなってきただろう。
おそらくだが、今のコロナ禍による影響で世界中の排出ガスは減少したと思う。
人間が移動しなければ圧倒的に排出ガスは減る。
しかも経済は最悪だからなおのこと排出ガスは減っているはずだ。
つまり持続可能な社会を実現するということは経済活動を見直すということ。
人類すべてが生きる上で必要とされている経済活動を縮小するしか道はない。
さて、あなたはエコな生き方をしているだろうか。
追記
私のように、一人分の食事を作るということはエコの観点からいうとたいへん効率が悪い。
なので野菜や食材を極力捨てずに料理して食べ切ることを心がけている。
また、食品は産地が遠ければ遠いほど移動にかかるエネルギーが大きい。
できるだけ近くで採れた野菜や国産の肉、近海で獲れた魚などを買うことでエネルギー消費は少なくなる。
多少、消費者の負担は増えることになるが、それが持続可能な地球環境を作ることにつながるのだ。
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