雪が降る日にだけ見ることができたあの光景

嫁のこと
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特別な日

 

東京に珍しく朝から雪が降っている。

一年に2〜3度あるだろうか。

東京の雪。

 

ニュースでは雪対策について真面目顔のニュースキャスターが、ああしろこうしろと大袈裟な話をしている。

都民も都民で毎年のことなんだから少しは雪に慣れたらどうなんだ。

たった3センチの雪だぞ。

 

雪という天気は私にはちょっと特別な天気のように思える。

雪が降ると、このちょっとした事件のように騒ぎ立てるニュースも特別な日の演出になっている。

 

私のように九州出身だと尚更なのか。

雨でも曇りでも晴れでもないこの特別感。

 

空から白いものがフワフワと舞い降りてくる天気なんて、女子じゃなくてもロマンチックすぎてワクワクする。

積もった雪にダイブでもしてみたい気分だ。

 

豪雪地帯に住んでいる方には申し訳ないが、九州では雪であたり一面真っ白なんて景色は見ることがない。

何年も雪を見ないこともある。

 

だから余計に空から舞い降りてくる白い雪を見ると、犬じゃなくても外に出てはしゃぎたい。

 

それでも私が住んでいた天草という島にも雪が積もった記憶がいくつかある。

子供の頃にすごい雪が積もり、かまくらを作って遊んでいる写真があったのを覚えている。

かまくらが作れるほどだから相当の雪だったんだんと思う。

 

高校3年の時に当時付き合っていた彼女がいた。

 

その彼女は高校の女子寮に住んでいて、デートの日は私はもっぱら女子寮まで迎えに行ったものだ。

私が迎えに行くと同級生の女子たちが窓から顔を出してヒューヒューと囃し立てる。

 

『手ぇつなげ〜!』

『チューしろぉ〜!』

 

お前ら男子か!

 

彼女の家はカトリックで、天草でいわゆる隠れキリシタンと言われる家系だったんだろう。

その彼女が高校の2学期が終わり、天草でもかなり田舎の方にある実家にバスで帰った日のことだ。

 

彼女の田舎には崎津天主堂というよくテレビでも紹介される立派な教会があった。

その教会の近くに同じく実家がある男の友人に頼み、彼女が帰った日の夜に崎津天主堂に連れて行ってくれるように頼んだ。

 

ストーカー?

 

その日は実は12月24日。

そうだ、クリスマスイブの日だ。

 

彼女は当然教会で行われるミサに行く。

その姿を私は自分の目で見てみたかったのだ。

 

なんせうちの家は仏教だったから、いかめしい仏像が並ぶ寺の法事くらいしか見たことがない。

だからカトリックの行事がどんなものかすごく興味があった。

 

それに今日はクリスマスイブ。

特別な日のミサである。

 

男の友人とバスに乗り込み、彼女がいる田舎へと向かう。

途中に見える海岸線を走る頃になると、なんと空から白いフワフワしたあいつが降ってきた!

 

雪だ!

 

彼女、教会、クリスマスイブ、雪・・・

 

今日という日を盛り上げるために、これ以外に何かアイテムが必要だろうか?

いやいや。

もうこの4つが揃えばプレミアムアイテムを手にしたと同じ。

 

バスが教会のある町に到着した頃には、すっかりあたりは暗くなっていた。

友人は私を教会の方へ案内してくれた。

 

仲のいい男友達だったので、私と彼女がつきあているのは知っている。

教会の前まできた私は、初めて見るその厳かな建造物の前で足がすくんでしまった。

 

真っ暗な中に、窓から神々しい光がまるでオーラのように放たれている。

少し曇った窓に顔を近づけてみると、教会の中の様子がよく見えた。

 

あ!

 

彼女が遠くにいるのが見えた。

頭から白いベールをかぶって手を合わせ少し顔を伏せているその光景は、私の目にはマリア様のように見えた!

 

『う、美しい。。。』

 

この時はまだ惚れてるから必要以上によく見える。

別れた後は、普通の田舎の女子高生にしか見えなくなった。

 

それなりだ。

なんで恋をしたのかもよくわからない・・・

 

しかしこの時は、『教会、クリスマスイブ、雪』というプレミアムアイテムのおかげで、彼女の姿もアプリで盛り盛りに加工されている。

 

大きな雪が私の坊主頭にも降ってくる。

まるでイエスキリストの祝福を受けるかのように・・・

 

雪の日は無音だ。

 

教会の外は物音ひとつしない。

雪はしんしんと降り積もる。

 

そして教会の中ではロウソクに火が灯された。

 

雪の日の私の美しい記憶である。

 

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もういないんだね

 

死んだもまた九州の出身である。

だから雪を見るのは珍しい。

 

嫁はビールが大好きで、日本酒やワインが苦手だった。

日本酒とワインを飲むと決まって酔い潰れてしまって、朝から気分が悪そうにしていた。

 

しかしなぜか雪の日だけは熱燗が飲みたいと言っていた。

そういう日は決まって鍋かおでんだ。

 

いつもは苦手な日本酒なのに、雪が降ると食器棚の奥から徳利とお猪口を取り出して燗をつける嫁。

私も嫁に付き合って、雪の日は決まって熱燗を飲んだ。

 

雪の降る日には熱燗が似合う。

確かにそんな気がした。

 

普段は缶ビールをグラスに注ぐこともなく缶のままグビグビ飲む嫁だったが、熱燗だと不思議とお互いお酌をして飲む。

差しつ差されつというやつだな。

 

このペースがいいのだろうか。

雪が降る日に飲む日本酒は、嫁は悪酔いしなかった。

 

今日は東京は雪だ。

もし嫁が生きていたなら今頃こういうはずだ。

 

『今日は熱燗にしようね!』

 

でも、もう君の声は聞こえない。

外はこんなに雪が降っているというのに・・・

 

そうか、君はもういないのか。

 

 

 

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