あなたが捨てた男の子はユーチューバーになりましたよ 〜90歳の母からの手紙

その他
Screenshot

年があけ季節もそろそろ

冬から春へと移ろうころ

熊本に住む母へ珍しく手紙を書いた

 

 

日常での通信手段は

デジタルがもっとも便利で確実だと

思っているタイプの人間なので

紙に文字を書き

わざわざ切手を貼って

ポストに投函するということが

超がつくほど面倒臭い

 

 

しかも書き留めとか簡易書き留めとか

そういう制度があるということからして

私は普通郵便が

確実に配達されるというのが

どうも信用ならない

普通郵便が絶対に配達される保証があるのなら

書き留めなんて必要ないと思うのだが・・・

 

しかし相手は90歳になる私の母親である

デジタルという言葉すら知らない年齢なのだ

だから通信手段となると

電話か手紙しか選択肢はない

たまに電話もかけるが

なんせ電話をかける相手は

90歳という高齢だから

返ってくる返事が

『はぁ〜?はぁ〜?』ばっかりで

とにかく疲れる

 

だからどうしても電話をかける必要がある時は

まずストレッチから始める

あと発声練習もしないと声が枯れる

電話がこんなに体力が必要だったとは・・・

しかも結局言いたいことは

たいして伝わらないのだ

おまけに電話代がかかってしょうがない

だから私は筆無精にも関わらず

母親には手紙を書くことにしている

 

実の母ではあるが

私が物心つく頃にはすでに離婚していたので

一緒に暮らした記憶はない

その母親に

なぜそんな面倒臭い手紙を書いたのかというと

私が本を出版することになったので

出来上がったら1冊送るから

読んでみてほしいということを

伝えたかったのだ

 

手紙なら時候の挨拶を入れたとしても

文字にして10行足らずで済む

しかしたったこれだけのことを電話で伝えるとなると

声を枯らして叫んでも

ゆうに30分はかかるだろう

だから母親に関しては

手紙がもっとも効率がいい通信手段なのだ

 

私が手紙を書いてから半月ほど経った頃

母親から返信が届いた

まあ内容は読まなくてもだいたいわかる

おそらく『出版おめでとう!』から始まり

あなたのお父さんができなかったことを

立派に息子がやってのけてくれて

本当に嬉しい・・・

 

とかなんとか書いてあるのだろう

ふふん

と思いつつ封を開け

嫌に長文の手紙を読んでみると

そこにはこう書いてあった

 

『私は本の出版には反対です!』

 

はぁ?

何言っちゃってくれてるの??

母親のまさかの反撃パンチに私は思わずよろけて

メガネがずり落ちた

メガネを掛け直してさらに手紙を読み進めると

 

『あなたは子供の頃からお人好しで、

誰でも信用してすぐに騙されるから、

出版の話もきっと騙されているのですよ』

だと・・・

いや〜、電話も疲れるけど

手紙を読んでも疲れるとは

はぁ

たしかに母親とは子供時代しか

一緒に暮らしたことはない

私がお人好しの田舎者だったのは

この母親がいうとおりで間違いない

母親にとっては

私はいつまでたっても子供のままなのだろう

 

高齢の母親に反論する気力も失せるが

あなたの息子はもう67歳なのですよ

人生の荒波に揉まれに揉まれて

今や平気で嘘だってつける

 

薄汚い大人になってから

もう何十年も経つのです

てか、大人は通り過ぎて

あなたと同じカテゴリーの老人なんです

今でもあなたは私が

貸したおもちゃを返してもらえず

メソメソ泣いてるお人好しの

チェリーボーイだと思ってるんですか?

 

もう勘弁してくださいよ〜

私の腹ん中、真っ黒ですよ

1日に何十件も届く詐欺メールや国際電話

振り込め詐欺の電話ですら

平気でかわしてなんなく生きているのです

そんなジジイがどうやったら出版社に

騙されるとでもいうのですか?

騙されるどころかすでに印税までいただいて

ほら、こんなに立派なソファまで買いました

 

Screenshot

 

と、そんなことを書いているうちに

あの可愛かったお人好しの僕ちゃんは

なぜこんな腹黒いジジイになっちゃったんだ?

とふと考えてしまった

自ら『薄汚い大人』になったことを

何、自慢してるんだ?

母親はあの頃のままの私だと思い込んでいる

自分が捨てた男の子は

今も変わらずお人好しの僕ちゃんのままなのだ

 

そっか

そうだな

 

人を疑うことも知らない

サンタも本当にいると思っていた

夢は叶うと信じていた

いつか母ちゃんは僕を迎えに来ると信じてた

じいちゃんとばあちゃんは死なないと思っていた

涙が出ない魔法を知っていた

 

そんな子供だったのに・・・

いつの間にか人は嘘つきばかりで

夢は叶わないから夢だと知り

魔法はいつからか使えなくなった

私が大人になったから

母親からの

予想もしない内容の手紙には

年老いて思い描く

子供の頃の私がいたのだ

おもちゃを返してもらえず

泣いている私が・・・

 

言ってもわからないだろうけど

あなたの息子は今

ユーチューバーやってますよ

 

そしてみんなを

少しだけハッピーにする魔法を

最近覚えましたよ

 

Screenshot

二つのランキングに参加しています!
もしよろしければ下の二つのバナーをクリックしていただけるとたいへん嬉しいです。 お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。
二つのランキングに参加してます!
もしよろしければ下の二つのバナーをクリックしていただけるとたいへん嬉しいです。 お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。
どちらかフォローしていただくとブログの更新をお知らせします!
嫁より長生きしてしまいまして - にほんブログ村
ぺこりーののYouTubeチャンネルはこちら
その他
スポンサーリンク

コメントありがとうございます! いつもコメント楽しみに読んでいます。 しばらくお返事ができませんがコメント頂けたら嬉しいです!

嫁より長生きしてしまいましてをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む