私が育った天草という島では
当時の娯楽と言えば
海で泳ぐことと魚を釣ること
この2つが楽しめなければ
この島の生活は退屈すぎて
早く転生を待つしかなかった
さらに魚が好きじゃないという方は
学校を卒業して島を出るまでは
生き地獄のような生活である
私はなんとか泳ぐことが好きで
魚釣りもまあまあよくやった
しかし貧乏だった私は
釣りの道具はお粗末なものしか持っていなかったので
立派な魚が釣れたという記憶がない
一度でいいから自分の釣った魚で
解体ショーみたいなことをやってみたかった
そして自分が釣った魚でお腹を一杯にしてみたかった
しかし、こういう島だから
そのうち同級生の誰かが漁師になったりする
友達と一緒に漁を経験すると
もう魚釣りとかバカらしくてできなくなってしまった
針と糸でチマチマ釣るなんて
夜店の金魚すくいとたいして変わらない
漁船で豪快に一網打尽にする方が
いかにも獲物を獲っているという感じだった
そんなこんなで
結局私の釣りの腕が上がることはなく
釣りはやめてしまうのである
それから社会に出て何年か経った頃
日本にバス釣りのブームが起きた
誰かが外来魚のバスを
いろんなところに放流したおかげのブームだ
この時はもう働いて金も稼いでいるので
道具にも金をかけた
フローターというでっかい浮袋に乗って
ダム湖に浮かんだまま釣りをする
仕事の合間にやる趣味としては
1日中自然の中にいるので
ストレスも解消され
実に気持ちが良かった
しかし・・・
相変わらずバスは釣れず
この時初めて自分には釣りの才能がないことを知った(遅っ!)
釣れたところで食えもしない魚にお金をかけたことが
急にバカらしくなって
バス釣りもやめた
私は人生の半ばで
魚は買って食うことに決めた!
だいたい、うまくいかないことって
やるなっていうことなんだと思う
それに逆らって無駄な努力をすることは
金ももったいないし時間の無駄!
きっとそれが神の意志だから
人間はもっと素直になるべきなんだな
それとは逆にうまくいくことは
不思議とうまくいくものだ
人生のことわりとはそういうものだと
釣りが私に教えてくれた
実は昨年の2月頃に
私の本を出版してくれた出版社に
1本の電話が入った
すぐさま担当編集者から私宛に
鼻息を荒げたメールが届いた
『映画会社から問い合わせの電話がありました〜!!』
という内容だった
本の出版当初、編集者の方とは冗談で
この本が映画になればいいなと話していたので
まさか!と思ったが
冗談が現実になりそうな状況に
おしっこをちびりそうになったのを覚えている
しかもその映画会社は
誰もが知るあのゴジラの会社である
私じゃなくても誰だって前立腺がピクピクするはずだ😂
さらにその問い合わせの内容を聞いて
私は白目を剥いた!
その映画会社の方は電話でこう聞かれたそうだ
『他の映画会社から映画化の話は来てませんか?』
という確認だったのだ!
ヒョエ〜
そんなまさか原作の取り合いみたいな話??
そんな私が書いた本いいっすか??
たちまち私は巨匠になった気分だった
夢のようだ・・・
そしてあれから1年以上が経過し
映画の話はパタリと消えた
夢のようだと思った話は
本当に夢で消えた
ここでみなさんにも映画のオファーが来ました〜!と
盛大にアナウンスしたかったが
いやいや、そんな話を私が先走ってしまうのは
きっと映画会社に迷惑がかかる!
だから今までずっと黙っていた
言いたくて言いたくて前立腺がムズムズしたが
さすがにグッと我慢した
しかしあれからもう1年以上も経過した
だからもうとっくに時効だろう
結局映画の話はたった一度の電話での問い合わせで終わり
それから発展することはなかったのである
私は映画のキャスティングから
公開初日の挨拶のスピーチまですでに考えていたのに・・・
結局何度もムズムズした前立腺は
そのせいかどうかは知らないが
悪性の癌になり
ついには今月全摘されてしまう運命になっている
あんまり刺激しちゃダメだな・・・
こうして映画の話はポシャってしまったが
私にしてみれば
有名な映画会社が一度でも映画化を考えてくれた
それだけでたいへんありがたいと思った
実に幸せなことである
映画のプロの方たちが
私の本を読んでくれたのだから
その後先方からの連絡はなかったわけだが
だからと言って私的に
気を揉んで待っていたわけでもない
いくら心配したところで
うまくいくことは
何もしなくてもうまくいくし
うまくいかないことは
どうやってもうまくいかないんだと
魚釣りが教えてくれたから・・・
そうだ!私はすでに子供の頃に学んでいたのだ
うまくいかないことを必死で追いかけるのは
人生の無駄になる
要するに諦めろということだ
魚釣りも
映画も
私の分相応ではなかったんだな
まあどうやっても諦められないことも
人生にはありますがね


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