CDデビューは67歳!
ピアニストのフジコ・ヘミングさんの名前は知っている。
しかしピアノ演奏を聴いたことがなかった。
私がクラシックに疎いのもあるが、元々若い頃は髪をデップで固めたパンク少年だったからピアノに接点がなかった。
娘がピアノを習い始めてからは、何度かピアノの発表会で娘の演奏を聴いたが、私の人生にピアノが関わったのはそれだけだ。
ところが私の友人の女性が、コロナで延期となっていたフジコ・ヘミングさんのコンサートに今年の1月に行ったそうだ。
場所は立川。
フジコ・ヘミングさんはすでに89歳というご高齢だから、もしかすると生でピアニスト『フジコ・ヘミング』の演奏を聴けるのはこれが最後かもしれないと友人は言っていた。
コンサートから帰った友人の感想はただ一言『素晴らしい演奏だった』と言った。
そしてコンサートホールでフジコ・ヘミングさんのCDを買ったというので、彼女に無理を言ってCDを借りることにした。
クラシック音楽は私の人生では一番遠いところにある音楽だ。
今はどんな方法でもクラシック音楽を聴くことができるが、わざわざCDを借りたのでちょっとかしこまって聴いてみた。
かしこまってもジャージ姿である。
『ラ・カンパネラ』
素晴らしい!!
クラシック音痴の私が言うのもなんだが、実に情感溢れるピアノだと思った。
イタリアの古い聖堂の鐘が揺れているかのような光景まで目に浮かぶ。
イタリアなど行ったこともない癖に・・・
それにしても89歳とは思えないほど素晴らしい演奏だ。
実はフジコ・ヘミングさんは67歳にしてなんと初めてCDデビューをされた方なのだ。
この方の前では、やれ腰が痛いだの目が見えないなど弱音は吐けない。
さらに驚くのはフジコ・ヘミングさんは、若い頃貧しかったせいで聴覚の大部分を失ってしまっている。
それでもこれだけの感動を聴く者に与えることができるというのはすごいことだ。
フジコ・ヘミングさんは自分自身で『私はミスタッチが多い。直そうとは思わない。』と言っている。
きっと楽譜通りに完璧に弾くことが、それが彼女のピアノ演奏の目的ではないのだろう。
それよりもいかにピアノのタッチに情感を込めて弾くか・・・
だから彼女の弾くピアノのメロディは他のピアニストの音とは一線を画す。
そして彼女はこうも言っている。
『私の人生にとって一番大切なことは、小さな命に対する愛情や行為を最優先させること。自分より困っている誰かを助けたり、野良一匹でも救うために人は命を授かっているのよ。』
私がフジコ・ヘミングさんの言葉に感想を言うなど恐れ多いことだが、実に素晴らしい言葉だと思う。
社会に影響力のある方は、自分が世界に向かって何を話すべきかちゃんとわかっている。
自分よりも小さくて弱いものに愛情を注ぎ助けて上げること。
それが人生で一番大事なことだそうだ。
そして『あなたにとってピアノとは?』と訊かれて、フジコ・ヘミングさんは
『猫達を食わせていくための道具ね』
と言い放っている。
小さな命とピアノがまるで比較する対象になっていない。
それほど小さな命に向き合って生きていらっしゃるのだろう。
どこかの残虐な大統領に聞かせてやりたい言葉だ。
あなたもピアニスト『フジコ・ヘミング』さんのように生きてみたらどうだ。
命を奪う者と命を助ける者。
どちらも同じ人間であることが信じられない。
最後に・・・
私も89歳まで何かの分野で現役でいられるだろうか。
フジコ・ヘミングさんのように今でも世界中で演奏活動をされている姿には敬服してしまう。
いつ寿命が尽きてもおかしくないご年齢なのにすごいことだな〜。
私は仕事をやめて年金だけ生活になると宣言していたが、果たしてそれでいいものかと思ってしまう。
偉大な音楽家の演奏を聴いて沸々と何かが湧き上がってくるのを感じた。
コメントありがとうございます! いつもコメント楽しみに読んでいます。 しばらくお返事ができませんがコメント頂けたら嬉しいです!
フジコさん大好きで、演奏もさることながら、自叙伝(イラストもまた可愛いの)、DVDもいくつか視聴しました。数奇な生い立ちと才能発掘までの不思議な経緯。厳しかったお母様(今の成功を見たらどれだけ喜ばれたか…)。ライブの裏側での血を吐くような練習と指揮者とのバトル。周りの人や猫、犬(確か1匹飼ってます)とのやりとり。背景を知って演奏を聴いたら余計に感動しました!
毎日戦禍を見せられている今、音楽を欲します。
フジコさん、いまだに演奏活動なさっている事に驚きです。
でも今は、フジコさんの力強い演奏よりも、辻井さんの魂が洗われる様なピアノの方が必要かも知れません。