『THE TENDER BAR 』
別に私が特に邦題の付け方に厳しいとは思わないが、昨日見た映画『THE TENDER BAR』の邦題もなんかな〜という感じだった。
その邦題とは『僕を育ててくれたテンダー・バー』だ。
邦題の付け方に限らず絵画でも歌でもなんでもそうだが、説明しようという魂胆が見えた途端に私は興味がなくなる。
クリエイティブなものに説明は必要ないだろう。
私たちのイマジネーションでどうにでも作品を理解しそして評価をするのだから。
まあいつもの邦題批判はこれくらいにして、この映画は実に面白かったし共感した。
映画の好みは人それぞれだろうが、演出や演技、脚本など置いといてジョージ・クルーニーがこの映画を撮ろうと思ったことにスタオベである。
ストーリーはあるジャーナリストの自叙伝なので、そっか〜アメリカ人だろうが日本人だろうが皆同じ経験をして大人になるんだなとなんか心があったかくなった。
ただしストーリーはごく平凡。
貧しい少年が作家になるまでのことを実話に基づいてフィルムにしてあるだけだ。
誰でも大人になるにはこんなTENDER BARが必要だと思った。
大人の授業をしてくれる素敵なバー。
大人になるために必要なことなのに学校では教えてくれないこと。
昔は学校の先生にも粋な人がいて、ちゃんと大人の授業までしてくれた先生がいたような気がするが・・・
それにしても、少年に人生を語り続けるベン・アフレック演じるバーのマスターがカッコ良すぎて、こんな親父なら一度くらい抱かれてもいいかなと思った。
またバックに流れる音楽が最高だ!
みなさんご存知の『 Dancing In The Moonlight』という曲。
もはやカバーだらけで原曲は誰の曲なのか知りもしなかった。
どうやらこの映画の中で流れる曲が原曲らしい。
やっぱ原曲は素晴らしい!!
『King HarvestのDancing In The Moonlight』
ぜひ聞いてみてほしい。
実は私もこの映画のストーリーほどではないが、ほろ苦い大人の授業の経験がある。
それこそ絶対に学校では教えてくれないことだ。
私のTENDER BARは、私が高校生の時に通った田舎にあるスナックである。
コラ!!!
高校生がスナック通いって・・・w
いやいや。
私は授業を受けに行ってるのだから。
学校では教えてくれない授業を( ̄▽ ̄;)
当時は高校3年の卒業間近なころ。
隠れてじいちゃんの晩食用の焼酎を空にしたり、酒の飲み方など知らないのに友達と酒盛りをしたりと、とにかく若い頃から私は酒ばかり飲んできた。
また当時の私の周りの大人たちは、どういうわけか酒だけは大目に見てくれたのだ。
結局周りの大人たちも同じことをやってきたんだろうと思う。
もう高校も卒業というころだから、そろそろ大人のお店にデビューするぞと友達とよく話していた。
そして先輩から教えてもらったスナックに友人3人とデビューすることになる。
所持金は3人でわずか3000円。
これで3人が酔っ払うほど酒を飲ませろというのは泥棒と同じだな。
要するに飲み屋の勘定の相場すら知らなかったのだ。
大人になったつもりでもただのガキ。
そのスナックのママは3000円で飲ませろという私たちを見て笑った。
しかしその美しいママはカウンターの一番いい席に私たち3人を座らせたのだ。
映画のテンダーバーのマスターも、主人公が少年の頃からバーのカウンターに座らせていた。
バーのカウンターとは大人の授業を受けるには最適な場所なのだ。
このスナックのママを見て大人の女って美しいんだなと私は初めて思った。
胸元が大きく開いた服からはたわわな胸が半分こぼれそうになっている。
3人の高校男子は顔を上げられなかった。
みんな股間を手で押さえている。
そしてママは私たちに好きなだけ飲んでいいわよと言ってくれた。
たった3000円しか持ってなかったのに。
酒だけは強かったから浴びるほど水割りを飲んだ。
当時のウィスキーはダルマだ。
そしてママはいろんなことを教えてくれた。
テンダーバーのマスターと同じく、男は財布に隠し金を入れておくように言った。
お金をあまり持っていないときは途中で一度勘定をするといいということや、先にいくら持っているかママにこっそり伝えること。
そしてお店の女の子には優しくすること。
酔っ払う前に帰ること。
お店に長居はしないこと。
昔のことだからあまり記憶がないのだが、確かこんなことを話してくれたような気がする。
そしてしたたか飲んだ3人はママに深々とお辞儀をして礼を言った。
そして私は大人になった。
大学も卒業して社会人になったのだ。
初めてスナックデビューした日から数年が経っていた。
久しぶりに田舎に帰った私が向かった先は・・・
そうあのスナックだ。
お店のドアを開けるとママが私を見て微笑んだ。
ママは私のことをちゃんと覚えていてくれた。
私が今日は私がママに奢るから一番高い酒を出してというと、出てきたのはやっぱダルマだった。
ママは『大人は年相応のものを飲むものよ』と言って水割りを作ってくれた。
その時に聞いた話だが、あの高校3年の時に飲みにきた時の飲み代は実はソファ席に座っていた常連客が払ってくれていたそうだ。
私たちの話をソファ席で聞いていて、それでママにこっそりと金は自分が払うから好きなだけ飲ませてやってくれと言ってくれたのだ。
私はこれが大人の作法だと初めて知った。
大人になるということはこういうことなのか・・・
奢ってやるからと偉そうに言うわけでもなく名前も名乗らず、見知らぬガキに酒を奢ってくれる大人。
素敵過ぎる。
きっとこの人も私たちと同じような経験をして大人になった一人なのだろう。
私はそれから何度もそのママのお店に飲みに行った。
私が大人になれたのはこのお店のおかげだ。
追記
私は大人になってからスパイスカレーにハマった。
今ではステンレスのスパイスケースまで持っている。
スパイシーな辛いカレーが食べれるようになったのは大人になってから。
そしてうまいカレーが作れるようになったのも大人になってだいぶ経ってからだった。
これも大人の授業で学んだことだ。
学校では絶対に教えてくれない。
毎晩ビールを飲むようになったのも大人になってから。←当たり前
そして大人になって人生は時々ビールのように苦いものだと知った。
コメントありがとうございます! いつもコメント楽しみに読んでいます。 しばらくお返事ができませんがコメント頂けたら嬉しいです!
コメント再開後、初メ-ルです。昨日の北のミサイルの話、笑っちゃいました。今日のテンダ-バ-の話もなんかよかったです。コロナで鬱々とした日々ですが、ペコリさんのブログで楽しんでます。
素敵な大人に憧れます。
気持ちにもふところにも余裕があるオトナです。
きっと3人の若者たちに優しいまなざしを送ってくれていたのでしょうね。
映画のようです。ペコリーさんならなれそうです。
この映画見たくなりました。
ありがとう。