突然消える人たち
私は不動産屋でもないしマンションの管理人でもない。
だから近所の住人が突然引っ越したからと言って驚くことはない。
引っ越しの挨拶をする義務もなければ引っ越し先を報告する義務もないからな。
しかし最近引っ越ししていかれた方たちはなんだか気になるところがあった。
私が住むマンションは3階建てという低層マンションで、築年数も40年近くとたいへん古いマンションだ。
しかし駅まで30秒という立地に加えマンションの一階がミニスーパー。
コンビニにも大型スーパーにも1分以内の徒歩圏内という、スーパーコンビニエンスな環境の中にある。
なので古いにもかかわらず、空き部屋が出てもすぐに埋まってしまうという人気のマンションとなっている。
私はここに引っ越してきてかれこれ5年目になろうとしている。
このマンションの住人としてはもう割と古い方かもしれない。
そんな住居数が少ないマンションだから、住人の方達とは挨拶も交わすしいろんな話をする機会がある。
ところが最近立て続けに2つの家族が引っ越しして、このマンションを出て行った。
つい先週引っ越しされたご夫婦は、私と同年代でこのマンションに引っ越してこられてまだ1年足らずだった。
同じ階のお向かいさんなので挨拶もしたしよく話もした。
ところがそのご夫婦が先週突然の引っ越し!
夕方というか、もう暗くなってから引っ越しされたらしく、私はすでに酔っ払っていてまったく気がつかなかった。
もちろん引っ越し当日わざわざご挨拶に来て欲しいとは言わない。
しかし引っ越し前日には奥様と立ち話をしたばかりだったのだ。
そのときに一言くらい言ってもらえればとは思った。
しかしよくよく考えると、以前はご主人は毎朝ネクタイを締めて通勤されていた。
私も朝ゴミを捨てに行くときに会うので、『いってらっしゃい』と声をかけたことがある。
まるで世田谷のマダムのように会釈をしながら。
ところが最近はそのご主人が通勤されている様子を見たことがない。
ときどきゴルフクラブを持って近くの打ちっぱなしに練習に行かれるのは見たが、それは普段なら仕事されている昼間の時間だった。
もしかするとこのコロナ禍でご主人は仕事をクビになったのかもしれない。
年齢的に会社から一番クビを飛ばされそうな年代だ。
もしそうではなかったとしても、夜にバタバタと引っ越しするのは尋常ではない。
きっと何か人に言われぬ理由があったのだと思う。
今思えば、前日お会いした奥様もどことなくぎこちなかった。
まあ人の人生だから私がとやかく言う必要はない。
ただの賃貸マンションだからそれなりの人間関係だ。
しかし突然いなくなったのはそのご夫婦だけではなかった。
そのもう少し前にも同じフロアにひとり暮らしのおばちゃんがいた。
そのおばちゃんもコロナ以降仕事に行かなくなっていた。
昼間、ずっと家にいるからおかしいなとは思っていたが、だからと言って会社からテレワークを命じられるような職種でないことは知っている。
明らかにあのおばちゃんも職を失ったに違いない。
そしてそのおばちゃんに限っては、いつ引っ越したのかいつ消えていなくなったのかすらわからなかった。
ただ、消えたあとの部屋に何人かの男が尋ねてきたのを覚えている。
私の想像でしかないがちょっとめんどくさい人たちに見えた。
もしかしてあのおばちゃんはロシアのスパイだったのか!?
日本の公安警察に追われていたのかも・・・
それとも未来から来たお尋ね者という線もありゆる。
ということはあの男たちは時空警察だな。
文字数稼ぎにつまらないことを書いてしまった。
おばちゃんはどう見てもロシア人にも未来人にも見えない。
あの男たちはおそらく・・・
金融関係だったと思う。
コロナが変えた街の様子
政府による緊急事態宣言が続く中、飲食店の中には時短営業をやめてお酒を出し始めたお店が増えたらしい。
理由は給付金が支払われないため営業せざるおえないということだ。
それはそうだろう。
本当にコロナで死ぬか経済で死ぬかの選択になっている。
ところが経済的に殺されかけているのは飲食店だけではない。
その周辺にいる方たちも生活できずに苦しんでいるはず。
さらに非正規雇用のみなさんの多くが職を失い、毎日の食事もままならない方が大勢いると思う。
ある記事では、日本の人口の1/3が経済危機を感じていると報じている。
しかし相変わらず富裕層の資産は安泰だ。
なぜなら株価が下がらないからである。
ただしこの株価を支えているのは日銀や大手投資信託による株の買い支えによるもの。
これがいつまで続くかはわからない。
最近この小さな街を見て気づくことがある。
それは小さな街だからこそよく顔を見かける方が何人もいる。
いつもなら仕事をしている昼間なのに顔を見るようになったことだ。
中にはテレワークで自宅でお仕事という方もいるだろう。
しかし様子を見ればなんとなくわかる。
思わず大丈夫だろうかという目で見てしまう。
私が少しばかり支援させていただいている国際NGO『グッドネイバーズジャパン』から定期的に活動の報告がある。
実は2ヶ月ほど前にこの団体の職員の方から電話をいただいた。
それは寄付の増額についてのお願いの電話だった。
その声は切羽詰まっていて丁寧ではあるが必死の訴えでもあった。
とにかく困窮しているひとり親世帯が急増していて、支援が追いつかないということだった。
私もそんなに余裕のある生活をしているわけではないので、はいそうですかと言って寄付の増額を受ける気は無かった。
しかしあらためて調べてみると、とっくに政府が言う『自助』でなんとかなる段階は超えている。
国や自治体の『公助』が行き届かないなら、誰かが『共助』の手を差し伸べないとコロナの前に経済で人が死ぬ。
助けよう。
誰だか顔もしらない人たちだが、誰かが助けなければならない。
そして助けられてほしい。
顔も知らない人たちの支援で、今を困っている人たちは助けられればいいのだ。
このNGOの活動だけでも3ヶ月間に約3000世帯の家族が助かっている。
しかし日本中にはこの何倍もの数の生活困窮者がいる。
それにしても次は誰が引っ越して行くのか・・・
それぞれの人生だから考えてもしょうがない。
人生はときどき苦い酒のような味がする。
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