もうずいぶん昔の話ですが
当時占いに沼っていた妻が
一度だけ無理やり私を引っ張り出して
ある占い師のところへ連れていきました
とにかくよく当たるという有名な占い師で
以前の動画でも話したことがありますが
30年後の妻の死を予言した占い師でもありました
その時は私の未来を占って欲しかったのか
占いを信じない私を半ば無理やり
占い師の所へ連れて行ったのです
しかし、その占い師が言った私の未来は最悪で
波乱万丈な人生ということでした
まあまあ高額なお金を払って
ボロクソ言われる気分ってどうすか?😂
とにかく私はその占い師が言う
最悪の人生を生きるしかなかったのです
ただ・・・
一つだけ占い師が言った言葉で
私の心に深く残った言葉がありました
その言葉とは
占い師:『あなたは晩年だけはすごくいい!』
私:『晩年だけ?』
占い師:『そ!晩年だけ!』
まあお金を払ってるから一つくらいは
リップサービスかと思いながら
私にとっての『晩年』という言葉は
その日から特別な言葉になりました
しかし晩年っていつよ?
もしかして死ぬ前の年ってこと?
いや、死ぬ前の年がいいって言われても
その喜びを享受した途端に死んでしまっては
占い料の元も取れないじゃないか!
などと考えながら日々を過ごし
引越ししたり転職したりしながら
ついには東京までやってきます
思えば遠くまでやってきたな〜
そして自分の人生を振り返ってみて
ふと気づくのです
確かに波乱万丈だったけれど・・・
ぜんぜん悪い人生じゃないじゃん
その時私はある会社の重役になっていました
愛する妻とパパっ子の娘が一人
可愛いワンコが2匹それに
愛人が一人という慎ましい人生😂←ゴルァァァ!!
とても幸せな人生でした
今でもこんなに幸せなのに
私の晩年はもっといいのだろうか?
私は私の晩年がとても楽しみでした
私はバリバリ仕事をしました
そして妻は仕事を頑張る私のために
毎日愛情たっぷりの料理を作ってくれました
手作りの弁当も欠かせません
アレルギーのある私のために毎日掃除をして
家中どこもかしこもピカピカでした
ワイシャツをクリーニングに出すと私は首が赤くなるので
家で洗って妻が一枚一枚アイロンをかけます
私が仕事をするコンディションは
すべて妻が整えてくれていたのです
毎晩帰りが遅い私を夕食も食べずに
一人で待ってくれていました
毎日毎日家事をこなし2匹のワンコの世話をする
それが妻の仕事だったのです
そしてその日は突然やってきました
仕事中にかかってきた一本の電話
それは私の知らない大学病院からの電話でした
妻が倒れたという知らせでした
すぐにタクシーで向かった大学病院は
今まで見たこともないような巨大な病院でした
妻はわずかな意識の中で私にこう言いました
『仕事中に本当にごめんなさいね、私はもう死ぬの?』
こんな時にまで私の仕事のことを気遣う妻に
私は涙が溢れました
『絶対に助けるから!』私はそう叫ぶように妻に言いました
しかし妻は私の目を見てこう続けました
『私が死んだらあの2匹のワンコたちと一緒のお墓にしてね』
これが妻の最後の言葉でした
6月の梅雨の日でした
妻の棺には一度も着ることがなかった
花柄のワンピースを入れました
出棺する時に雨が急に上がり
雲間から一筋の陽光が差し込みます
『あ、今妻は空に行ったんだ・・・』
私は霊柩車の窓を開けそんなことを思いました
思えば妻の晩年はどうだったんだろう
私はいつも自分の晩年のことばかり気にかけていました
そうか・・・この1年は妻の晩年だったのか
妻はいつものように私のご飯を作り
ワイシャツにアイロンをかけ
掃除をして私の帰りを待っていた
2匹のワンコの世話をして
それが妻の晩年だったのです
あんなに温泉に行きたいと言っていたのに・・・
私は何もしてやれず
妻は天国へと旅立ってしまった
あの占い師が言ったことは本当でした
私が仕事が順調だからと妻に何もしてやれなかった後悔
そして一緒にご飯を食べながら話をした、何でもない日常
それが幸せだったと気づかなかったバカな自分
自分だけが健康で
妻の病には気づきもしない
占い師が言い当てたのは
そんな私の最悪の人生のことだったのです
妻が死んで
私は自分の晩年などもうどうでもよくなりました
今からいいことなんて
もういらないです
コメントありがとうございます! いつもコメント楽しみに読んでいます。 しばらくお返事ができませんがコメント頂けたら嬉しいです!